東京地方裁判所 昭和47年(借チ)2045号・昭47年(借チ)1037号 決定
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〔主文〕1 申立人が相手方に対し金一〇六万円を支払うことを条件に、申立人が別紙目録(一)記載の土地賃借権を東京都豊島区要町二丁目二九番地遠藤己吉、同町二丁目七番地宇佐見可明両名に譲渡することを許可する。
2 申立人が相手方に対し本裁判確定の日から六ケ月以内に金四一万円を支払うことを条件に、別紙目録(二)記載の建物を取り毀し、同目録(三)記載の建物を建築することを許可する。
3 別紙目録(一)記載の賃貸借契約の賃料を本裁判確定の月の翌月分から一ケ月金四、五四五円に改める。
〔決定理由〕(当裁判所の判断)
一 ……本件の資料によれば、本件建物は老朽しているが、いまだ朽廃の状態にはなく、朽廃時期が極く近い将来到来するとも認めがたい。したがつて、本件建物を土地賃貸借権付で譲渡することが、賃借権のみの譲渡とかわらないとの相手方の主張は当らない。そして、借地権の譲渡予定者において、譲受後に建物改築を予定し、その具体的計画が定まつている場合には、現賃借人において、譲渡許可と増改築許可の各申立を同時になし得、裁判所はこれを併合して審理、裁判することができると解するのが相当である。けだし、増改築の許可の裁判は具体的な増改築の計画について、増改築を制限する旨の特約を一時的に排除する機能を有するもので、増改築をする主体が問題ではなく、具体的増改築計画が土地の利用上相当であるか否かが問題となるのであり、譲渡許可と増改築許可の申立を同時に裁判しても賃貸人に不利益を与えることはなく、手続の経済上便利、有利であるからである。(譲渡許可後に譲受人において増改築許可の申立をしなければならないとすることは両当事者にとつて煩瑣である。)
次に、相手方は契約期間満了時に更新を拒絶する予定であるので、本件各申立は棄却されるべきであると主張するので案ずるに、現時点において更新拒絶に要する正当事由の有無を決するのは不可能であるところ、譲渡許可の裁判はもちろん増改築許可の裁判においても特に附随処分として期間延長の裁判がなされない限り当然には期間が延長されるわけではない。そして、賃貸人が期間満了時に更新拒絶を希望しているときは、期間延長の附随処分をするのは相当でない。したがつて、賃貸人は期間満了時に更新拒絶の正当事由があれば満了時の借地人に対し更新を拒絶できるというべきであるから、右相手方の主張は申立の棄却理由とはならない。賃貸人にとつて、建物が増改築されれば、更新拒絶権を行使しにくくなる不利益はあるが、借地上の建物の存続を図り、借地人を保護することが社会経済上利益であるとした立法の趣旨からいつて、右の不利益は賃貸人において甘受すべきものと解するのが相当である。なお、相手方は本件改築が新築であることに鑑み、借地法第七条との関連で当然借地期間が延長されることを懸念しているものと思われるが、増改築許可の裁判は前記のとおり特約を排除し、借地契約を特約のない状態におくのみであつて、同条の賃貸人の異議権まで奪うものではないと解すべきである。
二 ところで、増改築を制限する旨の特約の存否について、申立人はこれが存しないと主張し、相手方は特に答弁しないところ、本件土地を相手方の代理人として管理している小宮トラの供述によると、契約書等の書面による特約はないが、無断の増改築は許さない旨述べており、賃借人において許可なく増改築をすれば紛争惹起は必至であり、このような場合は賃借人において増改築許可の裁判を求める利益があると解するのが相当である。
三 本件の資料によれば、申立人が本件賃借権を主文掲記の者らに譲渡しても相手方に不利となるおそれはないと認められまた、本件建物の改築計画は土地の利用上相当と認められるので、本件各申立は後記の条件のもとに認容するのが相当である。
四 附随処分
鑑定委員会は、本件土地の更地価格を一平方米当り七六、〇〇〇円、建付地価格をその八五%、借地権価格をその七〇%とそれぞれ評価し、申立人に対し、財産上の給付金として借地権譲渡許可については右借地権価格の七%に当る合計五七三、〇〇〇円、増改築許可については右借地権価格の一三%合計一、〇六四、〇〇〇円を支払わせ、賃料を月額四、五四五円(一平方米当り二五円)に改定するのが相当である、としている。
当裁判所も本件各申立を認容するに当り、当事者の衡平を図るため申立人に財産上の給付を命ずるのが相当と認める。そして、その額は鑑定委員会の意見による本件土地の更地価格、借地権価格を基礎とし、本件が建物を改築することを前提としての借地権譲渡であることを考慮のうえ、右鑑定委員会の意見および従前の裁判例を参酌して、賃借権譲渡許可については右借地権価格の一三%に当る一〇六万円(一万円未満切すて)、増改築許可については右更地価格の三%に当る四一万円(一万円未満切すて)とするのが相当と認める。なお、増改築許可の裁判は借地権譲渡許可の裁判の失効(借地法第一四条の一二)とともに失効させるのが相当である。
賃料については、鑑定委員会の意見のとおり、本裁判確定の月の翌月分から一ケ月四、五四五円に改める。
目録<略> (河村直樹)